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平成16年10月18日
薬剤師過労死労災認定なる!! 愛知働くものの健康センター事務局員 近森 泰彦
「豊田監督署から今日連絡がありました。認定されました」10月15日午後杉山さんから電話が入りました。よくぞ押し込めたものだ、一瞬こんな思いが脳裏をかすめました。 杉山さんご夫妻が愛知健康センターに私を尋ねてこられたのは2002年(平成14年)の7月でした。証拠がないから難しいと弁護士に言われたが息子のことを考えると悔しくて夜も眠れない。何とか力を貸してほしい。など涙ながらのお話を伺い「ダメもとでよければやってみましょうか」と非力ながらお引き受けしました。その場から電話で予約をして、8月29日に杉山さん夫妻と3人で豊田監督署に出向き申請手続きをしました。 亡くなられた杉山貴紀さんは薬剤師の国家試験に合格した後、2000年4月名古屋に本社を置くスギヤマ薬品(ドラッグスギヤマ)就職しました。新入社員教育の後、5月に豊田市の永覚店に配属されました。店長以下社員が3名、パートとアルバイトが17名、合計20名で朝の10時から夜の9時までのローテーションを組んでいました。年中無休(元旦休み)、しかも薬剤師は彼1人、1週間にズック靴(品質の良いバスケットシューズ)一足はきつぶす労働が始まりました。その結果、翌年の6月やせ衰えた姿で突然死してしまいました。 会社は私の問いただしに「死亡された原因はすでに申し上げたとおり何ら当社業務との因果関係はございません」(代理人の●弁護士)という素っ気ない回答をよこしました。 「厚生労働省の立ち入り検査の01年度の報告では薬局で2%程度、ドラッグストアのような量販店の約20%で薬剤師がいなかった」(朝日03年8月23日社説)と報じています。罰則規定の厳しい労働安全衛生法を意に介せず青年の命を奪った後もまったく反省のないトップの姿勢は許すことができない思いです。 *これまでの取り組みで私の印象に残っていることは: @遺族のご両親があきらめずに労災申請を行ったこと。A両親が証拠集めに全力で取り組んだこと。B中谷弁護士が死亡前1ヶ月間の労働時間が303時間を超えることを明らかにした意見書を提出したこと。又、水野弁護士が労働者の証言テープをおこし、証拠として提出するなどトヨタ自動車の労災闘争の経験を生かした最終段階のきめ細かなつめを行ったこと。C誤嚥死亡説に傾いていた監督署の考えを覆す医師の意見書を提出できたこと。などをあげることができます。 *担当課長の認定説明は要約すると: @会社は最後まで認めなかったが直前1ヶ月の残業時間は労働者の証言を採用した。少なく見積もっても103時間以上である。A死因については、私も24歳の青年が気道閉塞で声も立てずに死んでいくのはおかしいと思った。医師の意見書が出たので改めて5人の局医による合議を持った。消去法で消していった結果不整脈(心室細動)による心停止と特定した。そのあと監督官は「長時間労働が死亡の原因です」と付け加えてくれました。私は今回の経験を通じて遺族の不断の努力とともに医師の真実を解明する意見書の大切さを学びました。今後健康センターの相談活動にこの経験が生かせたらと思っています。
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